最近Webサイトで「当サイトでは~でCookieを使用しています。使用に同意していただける方はOKをクリックしてください。」といったフレーズがポップアップで表示されるケースが増えています。こういったポップアップは「Cookie利用の同意バナー」と呼ばれ、国内外でCookieによるトラッキングへの規制が強まっている状況を反映して設置されているのがポイントです。
今回はCookie規制への対策が気になっている方へ向けて、Cookie利用の同意バナーの意味や広告・SEOへの影響、必要な理由や国内の導入現状などをご紹介していきます。
1.Cookie利用の同意バナーとは?広告への影響は
Cookie利用の同意バナーとは、各Webサイトを利用する際に表示されるオプトイン方式のバナーです。ユーザーがOKといった同意ボタンをクリックすることで、WebサイトがCookieを取得する行為に同意したことになるのがポイントです。
Webサイト内にタグとして設置されるので、
- iOS
- Android
といったOSに関係なくあらゆるスマートフォン、そしてパソコンでも表示されます。
Cookieには
- 保存したWebサイトのみが利用できるファーストパーティーCookie
- 広告表示において複数の広告主が利用できるサードパーティーCookie
の2種類があります。
ファーストパーティーCookieは
- アカウントの自動ログイン
- 閲覧履歴の保存や再表示
といった手段に用いられており、ユーザーの利便性向上へ活用されているのがポイントです。
もしオプトイン方式でCookie取得を行う場合、拒否されるとCookieが利用できずに利便性が落ちてしまうでしょう。またファーストパーティーCookieベースでリターゲティング広告を出している場合、その精度が落ちてしまうリスクもあります。
さらに同意を拒否されるとサードパーティーCookieでのトラッキングまで難しくなるので、外部広告を貼り付けていてもユーザーへ適した広告を表示しづらくなります。もし広告プラットフォームを埋め込んで利益を得ている場合は、パーソナライズしにくくなって利益が落ちてしまうリスクがある点にも注意しておきましょう。
ちなみにSEO的な観点からは、「Cookieの同意バナーをタグとして組み込んでいないと評価が悪くなるシグナルが搭載されている」という情報は特にありません。ですから直接的なSEOへの影響はないと判断してよいでしょう。
ただし表示しないことでユーザーから不信感を持たれて、離脱する可能性は0ではありません。これから解説するような背景もあるので、将来性を考えて対策したい方はCookie同意のバナーを設置しておいてください。
ちなみにWebサイトによっては
- 必要最低限のCookie:ブロックできないように
- 分析用のCookie:ブロック可能
- サードパーティーCookie:ブロック可能
といったように、項目ごとにCookie停止設定を行えるケースもあるので参考にしてみましょう。
2.【2022年4月には義務化】Cookie利用の同意バナーが必要な理由
Cookie利用の同意バナーが必要なのは、次のような背景があるからです。
GDPRやCCPAといった国外のCookieに関する法律を無視できない
一番大きな動きとして、EUが法律として制定した「GDPR(EU一般データ保護規則)」が挙げられます。
EUではCookieを個人情報に類するものとして認識しており、保護の重要性を痛感してGDPRを施行しました。2018年5月から有効になっているGDPRでは、「Cookieの利用に同意を求めること」という条文が含まれているのがポイントです。これによって
- 活動の拠点がEU圏内に存在している場合
- WebサイトでEUユーザーを集客している場合
といったケースでは、Cookie利用に同意を求めないと法律違反になる可能性が出てきました。
GDPRの対象はあくまでEUユーザーを対象にサービス提供している企業ですが、Webサイトによっては「想定していなかったEUユーザーが自社サイトを訪問している」という状況が発生しているかもしれません。分析ツール等でEUユーザーが訪問していないかを確認して、GDPRに引っ掛からないよう対策を行う必要があります。
またアメリカでは「CCPA(カリフォルニア消費者プライバシー法)」という法律が制定されました。こちらはGDPRと少々内容が異なりますが、Cookie利用に関して厳しい取り決めをしている点は変わりありません。各国でこういった法律制定が進んでおり、日本企業としてもCookieを意識しながらプライバシー保護を行う必要性があります。
ちなみにAppleは、「ITP」によってiPhoneといった端末でのCookieトラッキングを制限する方針を取っています。政府機関だけでなく大手IT企業もCookie規制の動きを取っており、Googleに関してはCookieに変わる新しいトラッキング技術(FLoC)を導入しようとしている点にも注目しておいてください。
日本国内でも政府がCookieの規制を強める予定
Cookieの規制が進んでいるのは世界だけではありません。日本でもCookie規制の動きは強まっています。
たとえば2020年6月に、「改正個人情報保護法」が成立しました。改正個人情報保護法ではCookieを個人に関連する情報と規定しており、「個人データとして外部へ提供して利益を得るような場合は、ユーザーに確認を取ること」といったルールが定められています。
2022年4月には本格的に施行されるので、もし今の時点で規制対象になっている場合はすぐにCookie同意バナー表示といった同意の手段を用意しておく必要があるでしょう。
ユーザーのプライバシーへの関心が高まっている
上記のように国内外でCookieやプライバシー保護への活動が活発になっている中、ユーザーのプライバシー意識も高まっています。
日本では大手企業のリクルーティングサービスにおいて、Cookieを使って個人情報を特定、外部へ提供して利益を得ていたことが発覚して騒ぎになっています。またCookieとは直接関係ありませんが大手SNSのサーバーから個人情報が流出するなど、プライバシー関連の問題もよく取り上げられているのもポイントです。
こういった状況でユーザーのプライバシーへの関心が増している中、Cookie同意バナーの表示といった対策を実行していないと信頼性低下につながってしまう恐れもあります。企業信頼性確保のため、明確な個人情報取り扱いの規則を社内で定めておくと安心です。
3.Cookie同意対策企業は国内でわずか7%!?早めに対策しよう
プライバシーに関するテクノロジーを提供している「Priv Tech社」では、WebサイトにおけるCookie利用の同意画面表示有無を、国ごとに調査してデータ開示しています。結果としては
- 欧州:87.98%
- アメリカ:38.25%
- 日本:7%
となっており、日本のCookie同意への取組が遅れていることが明確化しました。また、半年間で同意画面表示率が2ポイントしか改善されなかったというのもポイントです。
Cookieの取得同意に関して日本が遅れた国と今後思われないように、広告提供等を生業とする各企業がCookie同意を行うことの重要性を確認して、対策を取る必要があります。
4.まとめ
今回はCookie同意バナーとは何か、そして必要な背景や日本の対応率現状などをご紹介してきました。
ヨーロッパやアメリカ、そして日本でもCookie規制の動きが強まっています。Cookie単独では個人情報を特定できないものの、他のデータと結びつけてしまうとユーザー行動などを細かくトラッキングできてしまう点があるので注意が必要です。
ちなみにイギリスがG7各国へ「Cookieの同意ポップアップはユーザビリティ上有害、他の方法でスムーズに同意を取るべきだ」というような呼びかけを行っています。もしかしたら今後Cookie同意バナーに関する見直しが進む可能性もあるので、動向について最新情報を逐一チェックしておくと安心です。