Shopify アップデート 2025 配送と在庫完全ガイド ─ Summer ’25 で物流オペレーションはここまで自動化できる

shopify アップデート 配送完全ガイド

物流コストが高騰し、在庫を持つこと自体がリスクになりつつある2025年。
そんな中で発表された Shopify Editions Summer ’25は、150超の新機能のうち配送・在庫カテゴリだけで20項目前後を投入し、ピッキングから越境配送、返品処理までを追加アプリなしで自動化できるレベルに到達しました。

本記事では、まず アップデート全体の中で物流領域が占める比率と Shopify のオペレーション・レス戦略を整理したうえで、配送&在庫アップデート8選、それらを実務に落とし込む4つの切り口、自動化を実装するロードマップを順に解説します。

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1.Shopify Editions Summer ’25 全体像と「配送・在庫」カテゴリの位置づけ

2025年発表のShopify Editions Summer ’25では、合計150件超の新機能が公開されました。そのうち Shipping セクションだけで 12 項目、Operations で 返品・在庫、関連が 4 項目――あわせて 約1割強が物流領域に割かれています。ピッキングリスト印刷から多拠点一括送料、DDP ラベル購入まで 出荷前 → 越境 → 返品を標準機能でつなぐアップデートは、コスト高騰と人手不足に直面する事業者がオペレーション・レスを実現するための核心といえます。

1-1.Horizons アップデート150項目の中で物流領域が占める比率

Shipping➡︎12( Pick list 印刷、在庫転送追跡、分割出荷、Flat rate 送料など )

Operations(物流関連)➡︎4(返品確定後に売上計上、ストアクレジット即時付与ほか )

合計150件中、物流関連は16 件(約 10.7 %)。
昨年のSummer ’24では Shipping 項目が7件だったため、1年間で物流アップデート数がほぼ倍増しています。これはShopifyが「販売チャネルの次は配送コスト削減が勝負所」と明言しているのと同義です。

1-2.物流コスト高騰時代に Shopify が目指すオペレーション・レス戦略

1.「クリック1回で原価を下げる」機能投入

・Pick list in admin で紙の作業指示書を自動生成し、ピッキングミスと再作業コストを削減
・Flat rates for multi-location orders により、多拠点発送でもチェックアウト送料を 1 料金にまとめ、カゴ落ちを防止

2.越境リスクをシステム側で肩代わり

・DDPラベル購入 が管理画面から可能になり、関税立替や追加請求の CS コストを消滅させる。

3.人手のかかる横持ちと返品を自動化

・Transfer tracking for multiple shipments と Split fulfillment by item quantities が、欠品時の倉庫横持ちを自動振り分け
・Confirm returns to update reporting で返品完了ステータスを確実に会計へ反映し、手動修正を排除

➡︎Shopify は「在庫を動かすコストと確認する手間をどこまでゼロに近づけられるか」を指標に、標準機能を拡充しています。Summer ’25 の配送・在庫アップデートは、その戦略を具体的なUIとAPIに落とし込んだ最新版と言えるでしょう。

Shopify構築完全ガイド|スキル・準備・設定方法を徹底解説!についてはこちらの記事もぜひご覧ください!

2.配送 & 在庫アップデート8選

Horizons では「出荷前の棚卸しから、越境配送後の返品処理まで」を Shopify の標準機能だけで回せるよう、物流まわりに実務的な改善が集中しました。読み取れる主要トピックを、担当者目線で分かりやすく整理し直します。

2-1.Pick list を管理画面で即出力

shopify 画面
・管理画面から商品別/注文別のピッキングリストをワンクリック印刷。
・SKU、数量、商品画像入りで誤ピック防止。

[簡単にいうと]
ワンクリックで「倉庫用の買い物メモ」を印刷できる

2-2.複数便に分かれる在庫移動を一元トラッキング

shopify 画面
・1つの転送番号が複数便に分かれても自動追跡し、入荷漏れを回避。

[簡単にいうと]
倉庫間の荷物が何便に分かれても、まとめて追える。

2-3.配送・店頭受取・ピックアップを 1 画面で設定

・ロケーションごとの配送/受取方法を統合ビューで管理。
・料金変更も即反映。

[簡単にいうと]
送料や店頭受取の設定を1枚の画面で済ませられる。

2-4.バーコードスキャンで在庫転送を高速化

・ロケーション間の在庫移動をバーコード読み取りで完結し、手入力ゼロに。

[簡単にいうと]
バーコードをピッと読むだけで在庫移動を登録できる。

2-5.不足分だけ自動で分割出荷

・在庫不足分を他倉庫へ自動振り分け。
・手動割当て不要で欠品・横持ちを削減。

[簡単にいうと]
足りない在庫をシステムが勝手に別倉庫から出してくれる。

2-6.複数拠点発送でも送料一律を実現

shopify 画面
・複数倉庫から送ってもチェックアウト画面では定額送料を 1 つだけ表示。

[簡単にいうと]
どの倉庫から何個送っても、お客さまには送料を1回だけ見せられる。

2-7.国際配送の DDP ラベルを Shopify で購入

・DHLの DDP(関税込み)ラベルを直接購入。
・追加徴収ゼロで越境返品率を低減。

[簡単にいうと]
関税込みの海外送り状をワンクリック購入=追加料金トラブル無し。

2-8.ロジスティクスパートナーを拡充 & 管理画面で可視化

Flexport、ShipBobなど3PLを強化し、費用・在庫をダッシュボードで比較。

[簡単にいうと]
複数の外部倉庫サービスを料金比較サイト感覚で選べる。

Shopify構築完全ガイド|スキル・準備・設定方法を徹底解説!についてはこちらの記事もぜひご覧ください!

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3.実務でどう効く? ロジスティクス自動化4つの切り口

配送と在庫のアップデートを「便利そう」で終わらせず、実際の運用でどのコストが下がり、どの指標が伸びるのかを整理したのが本章です。倉庫をまたぐ発送、越境配送、返品処理、在庫補充、多くのECが悩むこの4領域を、Summer ’25 の新機能でどう改善できるのか具体的に見ていきます。

【コラム】在庫管理110番

在庫管理の仕組み化は、物流コストを削減するうえで欠かせない基盤です。
在庫管理110番 を運営する「瀬戸内scm株式会社」は、在庫・物流の仕組み作り・現場改善を専門に支援するコンサルティング企業です。
クラウド在庫管理システムの導入支援から、IoT重量計による自動在庫チェック、在庫管理セミナー、データ分析研修まで幅広く手掛け、製造業・小売業・EC事業者の業務効率化を支援してきました。単なるシステム導入にとどまらず、現場フローの標準化や属人化解消まで伴走する点が評価され、多くのEC事業者が“第二の在庫部門”として活用しています。
在庫管理や物流改善に課題をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。在庫管理アドバイザーによる無料個別相談を実施中です。

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3-1. 分割配送:倉庫分散でもカゴ落ちを防ぐ送料設計

[課題]
複数倉庫に在庫を分散していると、同じ注文でも商品ごとに送料が加算され「思ったより高い」とカゴ落ちが発生しやすい。

[アップデートでどう変わる?]
・自動分割出荷が在庫不足分を別倉庫へ振り替え。
・それでもチェックアウト画面では送料を1回分だけ表示できるようになった。

[効果イメージ]
「送料が増えるかもしれない」という心理的ハードルが消え、マルチロケ導入後に下がりがちな決済完了率(CVR)を維持 できる。倉庫管理側は手動で在庫を振り替える作業が不要になり、横持ちコストも最小化。

3-2. DDP 越境:関税前払いで再配達・返品コストを削減

[課題]
海外配送では「配達時に関税が掛かったので受け取り拒否」というケースが後を絶たず、往復送料と再配達の手間が重い。

[アップデートでどう変わる?]
・管理画面からDHLのDDP(Delivered Duty Paid)ラベル を購入可能。
・決済時に関税・消費税まで徴収するため、買い手が追加請求を心配しなくて済む。

[効果イメージ]
・受け取り拒否や保留通関が大幅減 → 返送送料・通関手数料の削減
・CSへの問い合わせ件数も減り、国際配送の顧客満足度が向上
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3-3. 返品→クレジット即時付与:リピート率を下げない返品処理

[課題]
返品受付から返金・再購入まで時間が掛かると、次の購入タイミングを逃しLTVが伸びない。

[アップデートでどう変わる?]
・返品が倉庫でスキャンされた瞬間に ストアクレジット(残高)を自動発行。
・クレジットは Shop Pay/Shopアプリ に即時表示され、買い手はワンクリックで再購入できる。

[効果イメージ]
返品による売上ロスを次の注文で即回収でき、リピート率低下を防止。CSは「返金いつですか?」への対応が不要になり、応対コストを削減。

3-4. AI 在庫予測:廃棄・欠品率を同時に最小化する発注サイクル

[課題]
売れ筋の欠品と売れ残り廃棄を同時に防ぐには、人手での需要予測に限界がある。

[アップデートでどう変わる?]
・AI需要予測 API が過去の販売・季節性・広告施策を学習し、SKU ごとに推奨発注点を提示。
・引当エンジンv2と連動し、欠品リスクが高いSKUから優先的に在庫を引き当てる。

[効果イメージ]
・売れている商品の欠品率が下がり販売機会ロスを回収
・過剰在庫を抱えにくくなり、廃棄・保管コストを圧縮。発注担当はExcel集計から解放され、分析業務に時間を使える

Shopify構築完全ガイド|スキル・準備・設定方法を徹底解説!についてはこちらの記事もぜひご覧ください!

shopifyを見るパソコン4.導入ロードマップ|実務ステップ

新しい配送・在庫機能を「知っている」だけでは、物流コストも作業負荷も変わりません。重要なのはどの順番で、どこまでを標準機能で、どこから外部リソースを使うかをあらかじめ決め、短期間で効果検証まで走り切ること。本章では、「まず何から着手すべきか」が明確になるロードマップとして、そのまま社内タスクに落とし込める形でご活用ください。

4-1. Week 1-2:現行フローの棚卸しとKPI設定

①物流フローの見える化
受注~出荷~返品までの人手タスクを列挙し、担当・平均処理時間をざっくり計測。

②KPIの基準値を取得
カゴ落ち率、越境返品率、返品再購入率、欠品率、在庫廃棄率を GA・Shopify レポート・WMS から抜き出す。

③優先度を決定
コストインパクト × 実装難易度をで整理し、今回のフォーカスを「送料設計 / DDP / 返品クレジット / 在庫予測」に確定。

4-2. Week 3-6:マルチロケ設定+Shop Promiseバッジ導入

①ロケーション情報を統合
管理画面 › > 設定 › > 場所 で倉庫を登録し、在庫数をインポート。

②分割出荷でも送料一括を設定
配送プロファイルを1本にまとめ、Flat rate を設定。

③Shop Promise 2.0 を有効化
配送 SLA が要件を満たす商品に自動バッジが付き、納期信頼度を向上。

④CVR テスト
導入前後で結帳到達率を比較し、送料表示の効果を早期に検証。

4-3. Week 7-10:DDP・返品ポータル・在庫引当 v2 を段階リリース

①DDP ラベル導入(越境ありの場合)
DHL Express/eCommerce を接続し、Checkout の Duties タグを ON。

②返品ポータルとストアクレジット即時発行
Settings › > Returns をオン、Flow で「返品スキャン完了 → ストアクレジット発行」を自動化。

③在庫引当エンジン v2 を有効化
「最短納期優先」または「送料コスト最小」アルゴリズムを選択。

④CSトレーニング
関税前払いフロー/クレジット再購入手順をマニュアルに反映。

4-4. Week 11-13:AI 需要予測と自動発注を本番化

①Forecasting API を接続
過去 18 か月以上の販売履歴を学習させる。

②在庫警告&発注アラートを Flowで設定
「推奨在庫点を下回る → バイヤーに Slack 通知 → PO ドラフト作成」まで自動。

③効果測定1
欠品率と廃棄率を 4 週ローリングで比較し、最初の改善幅を確認。

4-5. Week 14-13:KPI 検証と追加アプリ/Plus 拡張判断

①KPI 差分を集計
初期値と比べて、
・カゴ落ち率 △1.8 pt ・越境返品率 △35 % ・返品再購入率 +22 % ・欠品率 △40 % を目標に。

②ROIを計算
削減コスト + 増収効果 - 導入コスト(人件費・ラベル差額)を算出。

③追加アプリ/Plus 拡張の可否判定
KPI が目標を超えていれば 現行+無料機能で継続。

目標未達 or 需要増に応じて、3PL 連携アプリ・Plus Functions を次フェーズで検討

Shopify構築完全ガイド|スキル・準備・設定方法を徹底解説!についてはこちらの記事もぜひご覧ください!

shopifyを見る猫5.まとめ

Shopify Editions Summer ’25は、ピッキングリストのワンクリック印刷から多拠点定額送料、DDPラベル購入、返品即クレジット、AI需要予測までを標準機能として実装し、追加アプリを最小限に物流オペレーションの大半を自動化できる環境を整えました。本稿で示したロードマップに沿って段階導入すれば、カゴ落ちの主因だった送料表示問題や越境時の関税トラブル、返品・欠品による販売機会ロスを同時に解消し、物流コスト削減と顧客体験向上を両立でしょう。

アップデートにより便利な機能が増える一方で、「なかなか使いこなせない」「何から手をつけて良いかわからない」といった人は多いと思います。

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