アプリの成長に欠かせないARPU
今回は、アプリを収益化するためによく用いられる指数、「ARPU」をご紹介します。
混同されやすい「ARPPU」との違いや、計算方法、収益化に向けたユーザーへの
アピール方法などを、アプリビジネスの関係者向けに説明します。
1.ARPUとは?ARPPUとの違いとは?
ARPUとは
- ARPU(Average Revenue Per User)
=ユーザー1人あたりの平均売上金額
のことです。
次に混同されやすいARPPUついて説明しておきます。
- ARPPU(Average Revenue Per Paid User)
=課金ユーザー1人あたりの平均売上金額
つまり、非課金ユーザーと有料課金ユーザーを区別して考えるために分けられた、それぞれの指標である訳です。
なぜARPUが必要になったか
かつては「イニシャルコスト収益型」という、有料アプリを買ってもらう初期費用(イニシャルコスト)を見込んで収益を上げるビジネスモデルが大半でした。
しかし現在はソーシャルゲームなどが多様化して「ランニングコスト収益型」のアプリが増えました。無料アプリ配布で幅広くユーザーを取り込み、アイテム課金やサブクエスト課金(ランニングコスト)で収益拡大を目指すなど、収益化の手段が変化してきたのです。
その結果、単純にユーザー数を増やせても即収益につながらないケースが増え、課金ユーザー数と課金額の増加を目指すマーケティング展開のため、母数の異なるKPI(Key Performance Indicator 重要業績評価指標)が必要になってきた結果、ARPUとARPPUという言葉がそれぞれ使われるようになりました。
2.ビジネスモデルごとに異なるARPUの計算式
ARPUの計算式は、開発したアプリのビジネスモデル(収益化方法)ごとに異なります。
現在のアプリビジネスでは大きく分けて3種類の計算式が主に使われています。
ユーザー課金型アプリのARPU
アプリのユーザーに課金するモデルのARPUは、課金ユーザー1人あたりの平均収益(ARPPU)に、課金ユーザーの割合率(PUR=Paid User Rate)をかける式になります。
- ARPU = ARPPU × PUR
表示広告主に課金するアプリのARPU
広告の表示で収益を稼ぐ無料アプリのARPU計算には、エンゲージメントという概念が導入されます。エンゲージメント(Engagement )とは、ユーザーとアプリ運営側の間にある繋がりや関わりのこと。
アプリ起動の頻度や、SNS等の口コミ発生数、アプリの利用時間などを数値化したものです。表示広告主に課金するアプリのARPUは、このエンゲージメントに1000回表示あたりの広告単価(CPM Cost Per Mille)を乗算します。
- ARPU = Engagement × (CPM ÷ 1,000)
広告のクリック課金で収益を上げるアプリのARPU
アプリ内に表示した広告のクリック回数を収益源とする無料アプリのARPU計算では、
1回あたりの広告クリックで発生するクリック単価(CPC Cost Per Click)に、クリック率(CTR:Click Through Rate)をかけます。
- ARPU = CPC (クリック単価)× CTR(クリック率)
3.ARPUを改善させるためには?
アプリ事業者の運営能力は、ARPUの高さではなく、課金率の向上によって収益をいかに上げるかにかかっています。無料アプリの場合、ユーザー数を増やしたあと、課金することでユーザーがアプリを使う質的・経験的な向上がないと、課金率のアップにはつながっていきません。
ARPUの改善で収益を上げるには、課金率を高めるノウハウが必須になります。
無料ユーザーとの違いを明確にする
たとえばRPG型無料アプリの場合、飽きられないよう無料ユーザーの利用頻度を上げつつ、レベル上げに時間がかかったり、移動できるフィールドが狭かったり、適度な制限を受けたユーザーが、
「効率よくレベル上げしたい」「もっと新しいエリアに行って冒険したい」と欲したとき、効率よくレベル上げができる強い武器や、新しいエリアに踏み出すための船といった、効率や成果が視覚化した課金アイテムがあると、購入の第一歩を踏み出しやすくなります。
顧客ロイヤリティを高める
ECサイトや、いま流行のフリマアプリなどでは、課金率を上げるためには企業や商品・サービスに対して信頼や愛着を持ってもらう、顧客ロイヤリティも大切です。
ロイヤリティの高いユーザーが増えると、またこれをここで購入しようとか、この間迷ってやめたけどやっぱり買おう、など必然的に課金頻度が上がると言われています。
また、ロイヤリティが高まったタイミングで課金の提案をすることでより課金率をアップさせることが出来るでしょう。そのためには常にユーザー目線を持つことを忘れずにいることが重要になってきます。
4.まとめ
無料アプリを運営する場合、無料ユーザーは潜在的な課金ユーザーでもあります。無料で面白さを知ったユーザーが課金という次の第一歩を引き出すため、複数の角度からARPUを分析すると、みんなが欲しがりそうなアイテムや、追加したくなる拡張機能などが見つかることがあります。
特に近年はユーザーの利用傾向がアプリを通じてわかるようになり、利用時間やアプリを切ったタイミングなどがデータ化され、起動頻度の高いユニークユーザー向けのマーケティングが展開しやすくなりました。
世界最大のアプリストア「App Store」のアプリ数は200万個を超え、アンドロイド用やPC用も含めればその総数さえわからなくなっているアプリ戦国時代。生き残りをかけた競争を生き抜くため、正確なデータを積み重ねて分析を重ねることが重要です。