Shopify Editions Summer ’25で発表されたPOS(Point of Sale)機能のアップデートは、実店舗を持つ小売事業者にとって革命的な内容でした。
ハードウェア対応の改善やレジフローの高速化だけでなく、オンラインと実店舗間の在庫・売上・顧客情報の一元管理がさらに進化。加えて、実店舗での接客やキャンペーン施策がよりスムーズに行えるようになり、店舗運営の効率と顧客体験が飛躍的に向上しました。
本記事では、POSカテゴリにおける今回のアップデートの要点を、実際の業務シーン別にわかりやすく整理します。
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- 目次
- 1.実店舗経営者にとっての最新版POS事情
- - 1‑1. EC×実店舗運営の現状と課題
- - 1‑2. Summer ’25で「小売(POS)」が注目された理由
- 2. Summer ’25で強化されたPOS機能概要
- - 2‑1. ハードウェア対応とタッチ操作改善
- - 2‑2. レジフロー・チェックアウト速度の最適化
- - 2‑3. 端末間のクレジットカード処理強化
- 3. 在庫・売上・顧客情報の統合進化
- - 3‑1. オンラインと実店舗間のリアルタイム在庫同期
- - 3‑2. 顧客プロファイルの統合と接客精度向上
- - 3‑3. 売上分析・キャンペーン効果の横断的可視化
- 4. 実店舗体験が変わる!実務で見る改善ポイント
- - 4‑1. 店舗での「顧客リピート促進」機能
- - 4‑2. クーポンや会員特典の実店舗適用例
- - 4‑3. 店舗スタッフの接客サポート強化
- 5. まとめ
1. 実店舗経営者にとっての最新版POS事情
Shopifyはこれまで「ネットショップ構築」の印象が強いプラットフォームでしたが、近年は実店舗の運営支援にも大きく舵を切っています。この章では、まず今の小売業界が抱える課題と、Shopifyがどうそれを解決しようとしているのか、その全体像を整理します。
1‑1. EC×実店舗運営の現状と課題
日本の BtoC-EC 市場規模は年々拡大し、EC化率も上昇しています。一方、実店舗売上は伸び悩み、オムニチャネル対応を急ぐ小売が増えています。とはいえ、
・在庫を「EC・店舗で一元管理」できない
・POS/WMS/EC をつなぐシステム連携コストが高い
・顧客データがサイロ化し、LTV 施策が回らない
といった運用面の壁が、依然としてスムーズなチャネル統合を阻んでいるのが現状です。
1‑2. Summer ’25で「小売(POS)」が注目された理由
2025年5月に発表された Shopify Editions 「Summer ’25 Horizons」では、150 以上の新機能のうち POS が真っ先にプレスリリースの冒頭でフィーチャーされました。背景にあるのは、
・ショールーミング/ウェブルーミングが定着し、店舗決済スピードが売上直結
・BNPL、スマホ決済の普及で「レジ待ちストレス」を極小化する必要性
・EC 側の AI、自動化が進み、実店舗体験でも同等レベルの UX が求められている
といった業界トレンドです。
Shopify構築完全ガイド|スキル・準備・設定方法を徹底解説!についてはこちらの記事もぜひご覧ください!
2. Summer ’25で強化されたPOS機能概要
Summer ’25 Horizons”では、150 以上のアップデートのうち POSが主役級の扱いを受けました。新バージョン POS v10 は「レジ=待たせる場所」という常識を覆し、スマホ1 台でのタッチ決済・秒速チェックアウト・マルチ端末決済設定 をワンストップで実現。ここでは 3 つの視点から、実店舗経営者が押さえるべき進化点を解説します。
2‑1. ハードウェア対応とタッチ操作改善
[Tap to Pay 対応拡大]
iPhone だけでなく Android 端末でも非接触決済を受け付け (アプリ設定のみでカードリーダー不要)
メリット:ポップアップショップや移動販売でも即売・即集金が可能
[POS Terminal 刷新]
新型カウンターデバイスは EMV/PIC DSS 準拠、Wi-Fi/Ethernet 両対応で タブレットとペアリング
メリット:客席・テラスなど離れた場所でもレシート提示&チップ受付
[タッチ UI の大型化]
POS v10 でボタン・ナビを再配置し、指一本の操作で在庫/顧客検索が完結
メリット:新人スタッフでも3 タップ以内で会計完了、教育コスト削減
「ポイント」
物理リーダーを買い増すより「Tap to Pay」をオンにする方が初期費用を約7~12万円圧縮できるケースも。Wi-Fi の届かない展示会なら POS Terminal を有線接続+モバイル端末をサブ決済にする二段構えが安心です。
2‑2. レジフロー・チェックアウト速度の最適化
[ナビゲーション×スマート検索の高速化]
POS v10 では縦型サイドバー&文脈検索を導入し、商品の呼び出しや顧客タグ付けが平均2ステップ短縮。列待ちストレスを軽減します。
[「Ship and Carry Out」ワークフロー]
欠品分はオンライン配送、在庫品はその場渡し、というレジ一体オペレーションが標準化。分割発送の入力が自動化され、スタッフは「はい、発送分は後日お届けします」と案内するだけでOK。
[チェックアウト処理速度 2 倍]
Summer ’25 の新チェックアウトは 読み込みが約50 %高速化。Apple Pay・Shop Pay などワンタップ決済を組み合わせると、離脱率を削減した事例も報告されています。
「ポイント」
ピーク時には「カート作成▶︎ Ship and Carry Out で仮会計▶︎ 支払いリンクを SMS 送信」というハイブリッド決済を活用すると、レジ前の行列そのものをデジタル化できます。
2‑3. 端末間のクレジットカード処理強化
[Centralized Payment Settings]
管理画面 POS Channelから端末ごとに決済手段をON/OFF。レジ・フロア・バックヤード端末を用途別に切り分け可能。
メリット:カードリーダー紐付けミスやスタッフ権限トラブルを防止
[Apple Pay for Subscriptions]
サブスク注文でも Apple Payが利用可能な国を一挙拡大。
メリット:継続課金の入店契機を途切れさせず LTV 向上
[Tap to Pay × マルチ OS]
iOS/Android 共通のタッチ決済で 「端末=レジ」の概念を撤廃。イベントスタッフ全員が即時決済端末を持てる。
「ポイント」
デバイス単位の決済設定は、多拠点チェーンの 「本部一括コントロール」 と ポップアップ用の短期端末を同時に実現。権限ロールと連動させれば、レジ締めミスや不正利用のリスクを最小化できます。
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3. 在庫・売上・顧客情報の統合進化
Summer ’25 の Shopify POS v10 は、「データが分断されるのは当たり前」という前提を打ち砕き、1つのバックエンドで在庫・顧客・売上をリアルタイム共有できる水準に到達しました。これにより、
小売特有のギャップが大幅に縮小。以下では ①在庫、②顧客プロファイル、③分析基盤 の 3 点から進化を見ていきます。
3‑1. オンラインと実店舗間のリアルタイム在庫同期
[在庫更新は数分→数秒へ]
Summer ’25 では「マルチロケーション在庫 API」が刷新され、店舗・倉庫・EC すべてが同じ在庫テーブルを参照。追加開発なしで 売り越し・在庫切れリスクを低減 できます。
[場所別アロケーションと自動警告]
新UIではロケーションごとの販売速度と安全在庫を元に優先引当を自動計算。スタッフはアラート通知を受け、欠品を未然に防止。
[業務インパクト]
リアルタイム在庫管理を採用した小売は、手動棚卸やデータ突合せに月平均10時間以上を削減。浮いた時間はフォアキャストや売場改善に充てられます。また、同一プラットフォーム上で在庫を追跡する店舗は導入後数カ月で二桁成長を遂げたケースも報告されています。
「ポイント」
「Ship and Carry Out(その場渡し+後日配送)」と組み合わせれば、欠品アイテムを自動的に EC 受注へ切り替え、顧客満足度と売上の双方を取りこぼしません。
3‑2. 顧客プロファイルの統合と接客精度向上
[Unified Customer Profile が標準機能に]
オンラインと店舗で生成された全履歴が1枚のカードに集約。購入履歴・好み・ロイヤルティ情報をスタッフが即参照でき、個別提案が容易になります。
[数値で見る効率化]
統合後、多数のShopify POS利用企業が「レポート作成に費やす時間が短縮」と回答。平均で月5時間以上をコア業務へ再配分できたという調査結果も。
[パーソナライズ効果]
Unified プロファイルを活用したパーソナル提案で平均客単価が20%増という事例が報告されています。顧客ノートにサイズやカラーの好みをメモしておけば、次回来店時に専属スタイリスト級の提案が可能です。
3‑3. 売上分析・キャンペーン効果の横断的可視化
[新Analytics Dashboard]
ダッシュボードがウィジェット式に刷新され、実店舗売上/オンライン売上/BOPIS(店頭受取)などチャネル別KPIを1画面で比較可能。期間やロケーションをドロップダウンで絞り込み、レポートをそのままCSVやLooker Studioにエクスポートできます。
[ShopifyQL × POSレポート]
「平日夕方に来店し、かつSMS許諾がある顧客」のARPUを2クリックで抽出QLエディタがPOSにも対応し、SQLを書けないスタッフでも深掘り分析が行えます。
[キャンペーン効果のリアルタイム反映]
オンライン限定クーポンの使用状況がPOSにも即反映されるため、「実店舗への波及効果」まで可視化。Sidekickは施策のROIをAIで解釈し、「次は店舗限定セールを72時間実施すると◎」といった提案を自動で提示します。
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4. 実店舗体験が変わる!実務で見る改善ポイント
Shopify POSは「来店動機をつくり」「店内で魅せ」「会計後にもう一度つなぐ」3段階の仕組みを用意しました。リピート促進・特典適用・AI接客アシストを実務でどう活かすか。本章では、現場が即導入できる改善ポイントを分かりやすく掘り下げます。
4‑1. 店舗での「顧客リピート促進」機能
・SMSオプトインをレジでワンタップ
➡︎会計フロー内にSMS購読ボタンが追加され、スタッフ/顧客のどちらが操作しても即時許諾を取得。開封率の高いチャネルをその場で獲得できます。
・返品をストアクレジットへ自動変換
➡︎現金返金の代わりに店舗内クレジットを付与。残高は顧客プロファイルに紐づき、次回購入時に自動で消化されるためリピート率が向上。
・ポイント残高をCustomer viewで可視化
➡︎POSのカスタマービューに保有ポイントと特典をリアルタイム表示。スタッフは 「あと1,200円で次の特典」と具体的に案内できます。
4‑2. クーポンや会員特典の実店舗適用例
・スタッカブルクーポン(重ね掛け)
➡︎1会計で複数コードを同時適用可能に。「オンライン限定40%OFF+店頭10%OFF」の併用など、柔軟な販促が実現します。
・ドラフト注文割引の事前確約
➡︎取り置きや見積もり段階で値引きを保存でき、後日来店時も同価格を保証。価格ブレによる機会損失を防ぎます。
・ブランドテーマ対応のレシート&客面ディスプレイ
➡︎カラー・ロゴ・コピーをPOS画面とレシートに反映。クーポン提示画面もブランドトーンで統一し、体験に違和感ゼロを実現。
・ロイヤリティアプリ連携(Smile・Marselloなど)
➡︎会計時にポイント即時還元→不足分はキャッシュ/カード精算。オンライン・店頭をまたいだ「スタンプカード感覚」が好評です
4‑3. 店舗スタッフの接客サポート強化
・インテリジェント検索で商品が瞬時に見つかる
➡︎誤字・あいまい検索・バリエーションも一括ヒット。数千SKUでも数秒以内に候補を提示し、待ち時間を短縮。
・新UIでタップ数-30%
➡︎モダン化されたナビゲーションとスマートグリッドにより、新人でも数時間でレジ操作を習得。
・マルチリンガル Sidekick
➡︎音声でもテキストでも操作可能(20言語対応)。「在庫を確認して」「似た商品を提案して」と話しかけるだけで、スタッフ教育コストを大幅削減。
・リアルタイムKPIアラート
➡︎売上目標未達・在庫アラート・高単価顧客来店などをSidekickがポップアップ通知し、スタッフの次の一手を迷わせません。
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5. まとめ
最新POSはレジ・在庫・返品フローを自動化し、スタッフの入力や照合作業を大幅に削減します。その分できた時間を接客や売場改善に振り向けられ、リアルタイムで更新される売上・在庫・労務データを基に、値引きやシフト調整をその日のうちに判断可能。
さらにオンラインと店頭の受け渡しや返品が一気通貫になることで顧客のストレスも解消され、コストを抑えながら顧客満足と売上を同時に伸ばせる――これが最新POSがもたらす業務効率化の核心です。
最新アップデートでPOS機能が一気に進化した 2025 年版 Shopify。
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