最近聞かなくなってしまったブースト広告ってなに?
Web広告の手法は多様化し、企業は自分に合った方法で広告出稿できるようになりました。アプリを宣伝する際にも、Web広告は有効です。
ただし中には公平な競争を妨げるということで、実質禁止になっているアプリ広告手法もあります。代表的なのがブースト広告です。アプリを提供している企業は、ブースト広告とよく比較されるリワード広告との違いをよく理解した上でブースト広告がどれだけ危険かを認識する必要があるでしょう。
今回は初心者にも分かりやすくブースト広告とは何か、そしてリワード広告との違いや危険性などをご紹介していきます。
1.ブースト広告とは?
ブースト広告の「ブースト」には「押し上げる」という意味があります。
そしてブースト広告とは言葉通りアプリダウンロードを促す広告を短期間に大量に出稿し、アプリストア内でのランキングを意図的に引き上げる広告手法を指します。
アプリストア内の各アプリの評価には、アプリダウンロード数も利用されます。
そしてこのダウンロード数が短期間に増えれば、急激に評価が上がります。
結果的にリリースしたばかりの認知度が低いアプリも、あっという間に検索結果上位に入るという仕組みです。
2.ブースト広告とリワード広告の違いとは?
ブースト広告はリワード広告の出稿方法のひとつ
ブースト広告とよく比較される広告手法としてリワード広告があります。
結論から言うとこの2つはまったく違うものではなく、
リワード広告の出稿方法のひとつがブースト広告という位置づけになります。
リワード広告は、いわゆるアフィリエイト広告の一つです。
そして、そのアフィリエイト広告は以下の2つに分けられます。
・直接インセンティブタイプ
商品購入など成果を発生させたユーザーが報酬を得るタイプ
・間接インセンティブタイプ
広告を掲載したアフィリエイターや企業が報酬をもらい、
成果を発生させたユーザーにはそれが付与されないタイプ
この内直接インセンティブタイプに当たるのがリワード広告です。
ちなみに直接・間接という呼び方ですが、実際の違いはアフィリエイト広告を利用したユーザーが報酬をもらえるか・もらえないかです。ですから、ユーザー報酬発生タイプ・ユーザー報酬非発生タイプと言い換えたほうが、少し意味が分かりやすいかもしれません。
リワード広告の分かりやすい例
リワード広告の分かりやすい例は、ポイントサイトです。
ポイントサイトにはWebサービスやネットショッピングなど、さまざまなジャンルの広告が掲載されます。そしてWebサービス登録やネットショッピングでの商品購入など、条件に合ったアクションを行うとユーザーは各広告に記載されている報酬がもらえます。
ポイントサイトには、アプリに関する広告も出稿可能です。
そして以前ポイントサイトには大量のアプリダウンロード広告が掲載され、
ユーザーに金銭を与えることでダウンロード数を水増しする行為が以前流行っていました。
たとえユーザーはアプリ自体に興味がなくても、対価として報酬がもらえるので広告を利用します。そして広告経由でアプリが大量にダウンロードされ、アプリストア内でのランキング順位が不自然に伸びます。
この一連の流れが今回のテーマであるブースト広告に当たります。
決定的な違いは何か
・リワード広告
ポイントサイトのように、広告報酬の一部をユーザーに付与する広告
・ブースト広告
ポイントサイトなどにアプリダウンロード広告を短期間に大量掲載し、
意図的にアプリランキング操作を図る広告
となります。
要はリワード広告を利用し、アプリランキング操作を狙うのがブースト広告です。
3.ブースト広告の目的
ブースト広告はブラックハットSEOに似ている
SEO(検索エンジン最適化)の世界では、
かつてブラックハットSEO(不正な行為による検索エンジン最適化対策)がはやっていました。
ブラックハットSEOには主に以下の手法があります。
・被リンクを購入し、自社サイトにつながる外部リンクを大量に増やす
・コンピューターで自動生成した記事を、大量に量産する
・コピーコンテンツを作成する
中でも、
・被リンクを購入し、自社サイトにつながる外部リンクを大量に増やす
という手法はブースト広告に近いものがあります。
この手法ではまず、購入仲介サイトなどを通して個人や企業から被リンク枠を購入します。そして報酬を得た個人や企業は、契約した企業のリンクを意図的に貼ります。このような行為を繰り返すと、自社サイトにアクセスできる大量の被リンクが生成されます。
一昔前の検索エンジンは、コンテンツ人気や質を計測する指標として被リンクを大変重視していました。ですから被リンクが大量に増えるとそのコンテンツは質の高い人気Webサイトとみなされ、検索エンジンからの評価も上がりました。
ブースト広告でもユーザーに報酬を与え、見返りにアプリをダウンロードさせて、不正なアプリランキング操作を狙います。このように、金銭と引き換えに検索結果を不正操作しようとする点が両者が似ていると述べた理由です。
最近はGoogleが、不正なリンク貼りなどブラックハットSEOの取り締まりを強化しています。これと同じような現象が、やはりアプリストア内でも現在起きています。詳しいことは次の章で見ていきましょう。
4.ブースト広告の危険性
AppleやGoogleによるブースト広告に対する規約
ブースト広告は、不正にアプリ評価を上げようとする不正な手法です。
そしてアプリストア側も、ブースト広告を排除しようと対策を打っています。
たとえばAppleでは「Apple Store」内の規約で以下のように説明しています。
・金銭や報酬を見返りにダウンロードなどを促しランキング操作したことが発覚した場合、App Storeの信頼性を保つためアプリ開発会社自体をDeveloper Programから除名する場合がある
つまりブースト広告などを行って不正にランキング操作したことがApple側に発覚した場合、最悪アプリをApp Storeに公開してiOSにインストールしてもらう一連の流れがすべて停止してしまう危険性があります。
またGoogleも「Google Play」の規約で以下のように説明しています。
・報酬に基づくインストールは場合によってはポリシー違反になる
ブースト広告は明らかにポリシー違反となり、最悪アプリがストアから除外される可能性もあります。
ここまで記事を見ていると「リワード広告=全部ダメ」というイメージを持つかもしれませんが決してそうではありません。あくまでブースト広告のような意図的にアプリランキングを操作する不正行為が禁止になっています。つまり、新規ユーザー獲得の手法の一つとして純粋にリワード広告を利用している場合は不正に当たらないと言えるでしょう。
実際LINEアプリ内で「LINEポイント」が獲得できるアプリダウンロード案件が掲載されるなど、大手企業でもアプリダウンロード案件を紹介しています。もしあからさまに不正に当たるようであれば、このような広告掲載を堂々と行わないでしょう。
近年登場した動画リワード広告
最近では、動画リワード広告という手法も登場しています。
この手法はまずリワード広告でアプリの紹介動画を視聴してもらい、視聴後アプリダウンロードボタンを表示してダウンロードを促す、というものです。インストールするかどうかはユーザーの自由であり、ランキング不正操作にはつながりません。また最後まで動画を視聴してもらえる可能性も高く、認知度向上などにも大きな効果があります。
ただしリワード広告に予算を投下しすぎてダウンロード数が急増すると、不正操作と思われる可能性も高まります。あくまでアプリダウンロードを促す広告は集客手法の一部と捉え、メインはバナー広告など他のWeb広告手法にしたほうが安全です。
5.まとめ
今回はブースト広告とは何か、そしてリワード広告との違いや目的、危険性などをご紹介してきました。
ブラックハットSEO的手法であるブースト広告は不正な手法であり、GoogleやAppleから警戒されています。ですからたとえすぐアプリランキングで上位を取りたくても、安易にブースト広告に手を出さないようにしてください。