SaaSってなんてよむの?
最近ではクラウドサービスが一般的なものになり、それに伴って「XaaS(Xには任意の単語が入る)」というサービス形態が続々登場しています。その中でも、「SaaS(Software as a Service)」という単語を聞いたことのある方は多いのではないでしょうか。
SaaSと言葉だけを聞くと難しそうでビジネス向けのサービスを指すように思えますが、実は私たちの生活でもSaaSは気軽に使われています。企業としてはSaaSをしっかり理解し活用できるようにすれば、収益向上にもつながります。
今回はSaaSとは何か、そしてそのメリットや代表的なツール、紛らわしいPaaSやIaaSとの違いまで解説していきます。
1.SaaS(サース)とは?
SaaSとは、日本語訳すると「ソフトウェア・アズ・ア・サービス」という読み方になり、「サービスとしてのソフトウェア」という意味になります。クラウドサービスの、代表的なサービス形態の一つです。
SaaSでは、クラウド経由でアプリケーションを提供します。つまりユーザーは提供元と契約すれば、すぐ指定のアプリケーションをインターネット経由で利用可能になります。
SaaSが登場する以前にも、「ASP(Application Service Provider)」という似たようなサービス形態(厳密にはASPはサービスを提供している事業者自体を指すが、サービスを指す言葉としても用いられる)がありました。しかしASPはインターネット環境など普及に必要な設備が登場当時まだ安定しておらず、あまりシェアを広げられませんでした。
しかし2000年代になると、インターネット経由でサーバーを提供するクラウドサービスが登場しました。インターネット環境も整備され、クラウドサービスはどんどん広まっていきました。そしてその中で、ASPと同じようなコンセプトを持つSaaSが一般的なものになりました。
SaaSの種類
ちなみに現在SaaSは、大きく2種類に分かれています。
・ホリゾンタルSaaS・・・どんな業種でも使えるSaaS
水平という意味で、業界や業種に関係なく
特定の業務に使える機能を持っているのが特徴です。
・バーティカルSaaS・・・小売向けなど、特定の業種を対象に開発されたSaaS
垂直という意味で、業務ではなく、
業界や業種ごとに特化した機能を持っているのが特徴です。
従来はホリゾンタルSaaSの数が多かったですが、最近ではバーティカルSaaSの数も増えつつあります。
2.SaaSのメリットとは?
SaaSのメリットは、次の通りです。
どこにいても、アクセスしてサービスを利用可能である
SaaSでは、インターネット経由でサーバーと接続してアプリケーションを利用します。つまり買い切りタイプのローカルにインストールされるアプリケーションと違って、端末に依存せずに動作可能です。
ですからクライアントでは、パソコンやスマホなどさまざまな端末でSaaSを利用できます。これは外出先でもデータをチェックしたり、自宅でも作業ができる柔軟性の高さにもつながります。SaaSを上手く使えば、残業を減らしながら効率のよい作業が可能になるでしょう。
ちなみにどこでも仕事ができるということは、事業継続性の確保にもつながります。いつ災害が起こるか分からない日本では、いつでも事業を継続して行えるようにする準備が必要不可欠です。SaaSを導入すれば、会社に出社できない異常事態になっても安心して作業を継続可能です。
スピーディーに導入できる
SaaSでは、すでに指定のアプリケーションが開発された状態で用意されています。
つまりユーザーは契約してすぐアプリケーションを使えるので、サーバーを用意してアプリケーションをインストールするといった時間の掛かる作業が必要ありません。このため、スピーディーに導入可能です。
利用コストを安くしやすい
SaaSの料金形態は、基本的に「サブスクリプションタイプ(月額など、指定期間ごとに料金を支払うタイプ)」です。継続して料金は掛かってしまいますが、更新やメンテナンスなどアプリケーション利用に伴って掛かる作業は提供元が代行してくれます。
ですから長期的に見ると、結局買い切りタイプのアプリケーションよりSaaSのほうが安く済むパターンも多くあります。ただしSaaSによっては、アカウント数が増えるとコストがかさんでしまうなどのデメリットがあります。
SaaSを契約する際は、料金形態まで含めてサービスごとに内容を比較してみましょう。
作業データを共有できる
ローカルにアプリケーションがある状態だと、チームメンバーで作業データを共有するのもなかなか難しいです。しかしSaaSはインターネットにリソースがあるので、簡単に作業データを共有できます。
たとえばWebブラウザー経由でSaaSにアクセスし、メンバーの一人が作業を行います。その状態で他メンバーもSaaSにアクセスし、同時に作業データのチェックや調整などを行えます。インターネット上で一つの作業データが各メンバーに共有されるので、効率よく作業ができます。
3.SaaSの有名なツールとは?
ここからは、広く使われているSaaSの有名ツールについてご紹介していきます。
Gmail
冒頭でSaaSは私たちの生活でも気軽に使われていると言いましたが、その代表的なサービス例が「Gmail」です。Gmailは「Google」が提供する無料Webメールサービスですが、実はSaaSの一種です。
Webブラウザー経由でメールのやり取りが可能で、Googleアカウントで簡単にアクセスできます。 無料でありながらメールフィルタ機能、検索機能など便利な機能が多数使える優秀なサービスです。
その特徴からプライベートでも使うユーザーが多く、また企業でもGmailを活用しているケースがあるほど人気があります。
Microsoft Office365
「Microsoft Office365」 は、「Microsoft」が提供しているSaaSです。「Office 365 Business」「Office 365 Business Premium」など、複数の料金プランが提供されています。
その名の通り「Excel」や「Word」といったOffice系アプリケーションを課金しながら利用するサービスで、従来の買い切り型のOfficeサービスとは大きく異なります。利用している間は定期的にバージョンアップが行われ、どんな端末でも同じサービスが使えます。
そのためOfficeバージョンが古くなって作業に支障が生じる、社員ごとに使っているOfficeバージョンが違うなどのトラブルにもつながる状況を防げます。
他にもテクニカルサポートなどを受けられるので、ビジネスで利用すると非常に頼もしいOfficeサービスとなるでしょう。
Slack
「Slack」は、アプリケーション開発企業などでよく使われているチャット型SaaSです。チャットツールなのでチーム間でメッセージを共有しながら、メッセージ履歴をその場で簡単に確認できます。
またデータアップロードなど機能も充実しており、さまざまな作業をSlackに集約可能です。今ではクラウドソーシングサービスでやり取りをする際ツールにSlackを指定される場面も多いなど、ビジネスで一般的に使われるチャットツールとなっています。
4.PaaS・IaaSとの違いとは?
XaaSとして代表的なサービス形態には、SaaSの他に
・PaaS(Platform as a Service)
・IaaS(Infrastructure as a Service)
の2つがあります。ここではSaaSと混同しがちなこの2つのサービス形態と、SaaSの違いを比較しながらご紹介していきます。
PaaS(Platform as a Service)
PaaSとは、「プラットフォームとしてのサービス」を意味します。
ここでいうプラットフォームとは「システム開発の基盤」を指し、PaaSでは、システム開発に必要な基本的な構成があらかじめ整った状態でクライアントに提供されます。基本的な構成とはネットワーク、サーバー、OSやミドルウェアなどです。
SaaSではアプリケーションごとサービスが提供されますが、PaaSではアプリケーションを作る基本構成が提供されます。アプリ開発会社などではPaaSを利用することで、アプリケーション開発環境に掛かる手間やコストを削減してアプリケーション開発に集中できます。
ただし開発に使える言語はPaaS構成に依存するなど、注意点もあります。
IaaS(Infrastructure as a Service)
IaaSとは、「インフラストラクチャーとしてのサービス」を意味します。
ここでいうインフラストラクチャーとは「ハードウェア」を指し、IaaSは主にハードウェアのみがサービスとして提供されています。IaaSを契約すれば、クライアントのほうではハードウェアを用意する必要がありません。またSaaSやIaaSと比べて自由度が高く、サーバーの基本構成まで自社オリジナルにカスタマイズできます。
ただしOSやミドルウェアも搭載されていないので、一から環境構築する必要があります。そのため管理するにはクライアント側に専門の知識と技術が必要で、3サービスの中では最もコストが掛かってしまうのがデメリットです。
5.まとめ
今回はSaaSとは何か、そしてメリットや代表的なサービス、PaaSやIaaSとの違いをご紹介してきました。
クラウドサービスが広まる中、SaaSを活用して収益を伸ばす企業も多くなってきました。SaaSを活用すればどこでも業務が可能になり、またチーム間でのデータ共有なども簡単になります。
SaaS、PaaS、IaaSの他にもさまざまなXaaSがあります。ぜひSaaSも含め各XaaSを比較し、自社に適したクラウドサービスを導入してください。