広告の落札方式ってそんなに重要?
広告業界では従来「セカンドプライスオークション」という、一般的に知られているオークションと比較すると少しいびつにも見える手法が広告取引に採用されていました。しかし現在では一般的なオークションのイメージに近い、「ファーストプライスオークション」形式で広告を取引するケースが増えてきました。
そしてこの流れを、「Google」が2019年3月にセカンドプライスからファーストプライスへ広告オークション形式を変更したことによりさらに加速させています。
今回はGoogleも絡めながら、セカンドプライスオークションとファーストプライスオークションについて説明していきます。
1.そもそもセカンドプライスオークションとは?
Web広告では「SSP(広告掲載側が利用するプラットフォーム)」サーバー、「DSP(広告主が利用するプラットフォーム)」、アドサーバーなどが連携を取って広告枠の購入・掲載の取引を行っています。
そして今までの広告取引では、セカンドプライスオークションが主流でした。
セカンドプライスオークションとは、「1番目に高い値段をつけた広告主が、2番目に高い値段をつけた広告主の言い値で広告枠を購入する(実際には言い値+1円で購入するケースが多い)オークション形式」を指します。
話を複雑にせずに分かりやすくたとえると、たとえば広告主A、B、C、D、E社がそれぞれ
・A社・・・40円
・B社・・・60円
・C社・・・80円
・D社・・・100円
・E社・・・120円
の値段を出して入札を行ったとします。
この場合E社が広告枠を落札するわけですが、その際支払う金額は自社が提示した120円にはなりません。2番目に高い値段である、D社の100円で広告枠を買い取ることになります。この一連の流れが、セカンドプライスオークションの仕組みです。セカンドプライスオークションがWeb広告で今まで採用されていたのは、それなりのメリットがあったからです。
セカンドプライスオークションのメリット
まず、広告主は買い取れるギリギリの額で入札しやすくなります。
ファーストプライスオークション形式だと自分の言い値で広告枠を購入する必要があり、他競合の入札額を予想しながらときには値段を渋って低い額を提示してしまうときもあります。しかしこれは競合が思ったよりも高い金額を提示したときに、余力があるのに広告を買い取れないデメリットにもつながってしまいます。
しかしセカンドプライスオークションだと、2番目に高い値段を提示した広告主の値段で広告を買い取れば済みます。ですから多少高い金額で入札しても、それより実際の出費は少なくコストを抑えられます。このように心理的にはファーストプライスオークションより、セカンドプライスオークションのほうが高い値段を出しやすいと言えるでしょう。
また広告掲載側のほうでも各広告主の提示額が高い傾向になりやすく、広告が高く売れる可能性が大きくなるというメリットもあります。こういった理由で、セカンドプライスオークションは多くの広告サービスで採用されてきました。
セカンドプライスオークションのデメリット
セカンドプライスオークションはメリットもありますが、同時に大きなデメリットも抱えていました。
まず2番目に高い金額を出した広告主の言い値で広告枠を買い取るという性質上、実際に払う必要のある金額が分かりにくいという点です。この分かりにくさを利用して、自分たちの都合のよいように広告枠の金額を不正操作してしまうサービスもありました。
また最近ではアドテクノロジーに関するさまざまな仕組みが登場し、広告にかかわる全員が複雑な取引を自動で処理できる時代になっています。しかしその中で、たとえばファーストプライスオークションとセカンドプライスオークションが混在し、混乱を招くケースも出てきました。
業者の不正行為やオークション形式の混在などを見過ごし広告取引が混沌化したままでは、適正な取引はできません。そこで現在では、ファーストプライスオークションを採用して広告取引を行うサービスが増えています。
2.ファーストプライスオークションとは?
ファーストプライスオークションのメリット
ファーストプライスオークションでは私たちが一般的に思い浮かべるオークションと同じく、1番高い値段で入札した広告主がその値段で広告枠を買い取ります。セカンドプライスオークションと違って、入札方式が至ってシンプルなのが特徴です。
広告主はあらかじめ、どの値段で広告枠を買い取るか把握できるので費用対効果などを計算しやすいというメリットがあります。また広告取引もセカンドプライスオークションよりシンプルになるので、不正がはびこりにくく適正な取引がしやすいというメリットもあります。
また広告掲載側でも「ヘッダー入札」など最新のアドテクノロジーを駆使することにより、1番高い値で自分の広告枠を買い取ってくれる広告主を見つけやすくなっています。ですから入札額の読み合いが発生しても、利益を十分最大化できるようになっています。
Web広告業界でファーストプライスオークション形式を一般化させる上でボトルネックになっていたのは、Googleがファーストプライスオークションが盛り上がって以降もセカンドプライスオークションを採用していたことです。
「Google広告」などの広告サービスを展開しWeb広告業界でトップレベルのシェアを誇るGoogleの転換なしでは、ファーストプライスオークションの一般化は難しい状況でした。
しかしGoogleもついにファーストプライスオークション方式の採用を決意しました。これにより今後は、さらにファーストプライスオークションのシェアが世界中で広まっていくでしょう。参考:https://support.google.com/admanager/answer/152039?hl=ja
3.ファーストプライスオークションで懸念されることとは?
セカンドプライスオークションからファーストプライスオークションに方向を転換するに当たっては、いくつか懸念があります。
まず広告主側も広告掲載側も、従来より高いWeb広告スキルを身につける必要がある点です。ファーストプライスオークションでは、自分の言い値がそのままコストとして跳ね返ってきます。ですから広告主はWeb広告市場を冷静に分析し、広告枠を勝ち取れそうな適正価格を見つけ出さなければいけません。
また広告掲載側では値段の読みあいに巻き込まれて収益が大きく上下しないよう、最新のアドテクノロジーを上手く取り入れ、最適価格を提示している広告主を常に探し出す必要があります。
またファーストプライスオークションが一般化する間、広告額はセカンドプライスオークションのときより高くなると予想されています。Web広告業界全体のスキルが高まれば広告額は落ち着いていくでしょうが、しばらくはコスト増額に悩まされる企業も出てきそうです。
4.まとめ
今回はなぜGoogleがセカンドプライスオークションからファーストプライスオークションへ移行したのかを、各オークション方式の説明を中心にしながらご紹介してきました。
セカンドプライスオークションを悪用し不正を働く業者も存在し、アドテクノロジーの進化により市場の混乱なども起きています。そのような状況を打破し広告取引をシンプルにするために、ファーストプライスオークションのシェアが広まっています。
Googleが時代の流れに沿ってファーストプライスオークションを採用したのは、当然です。今後は広告主も広告掲載側も、適正な価格で取引ができるスキルをしっかり身につける必要があるでしょう。