現実世界にコンピューターグラフィックスを組み合わせた「AR」は、今やゲーム業界だけでなく小売や製造業界でも活用されています。広告やコンテンツマーケティングなどでARを活用するには、
- 自社で制作を行う
- 外注を行う
といった2種類の方法があります。
AR動画制作はハードルが高い面もあり、外注したほうが安心です。
今回はAR動画の概要や事例、そして制作の際注意すべきポイントなどを解説していきます。
1.AR動画とは?広告での活用も広がる注目のコンテンツ
AR動画とは「ARの仕組みを活用した動画」です。特定のマーカー(QRコードや画像)へスマートフォンのカメラをかざすと、その場で動画再生が始まります。
AR動画には
- トラッキング動画
- クロマキー動画
といった種類があり、各種類の特性を知ることでより有効にAR動画を広告へ利用できるでしょう。
トラッキング動画
ARマーカーから動画をシームレスに再生するタイプです。
具体的にはまずARマーカーにポスターやチラシのメイン画像を設定、AR動画のサムネイルとARマーカーをいっしょにすることで、動画再生時にポスターやチラシの画像が動いているように見せられる仕組みです。
このタイプだとARマーカーとサムネイルをいっしょにすればよいだけなので、通常の動画を制作して紐づけるだけで作業が完了します。シンプルなAR動画の再生タイプです。
クロマキー動画
特定の色を透過するように調整したAR動画です。カメラに投影されている映像と動画を組み合わせる際に使います。
クロマキー動画の場合、カメラのリアルタイム映像へAR動画の映像を合成することでユーザーへ体験を提供します。たとえば
- フォトフレームとしてAR動画を再生、その場で撮影できるようにする
- 歴史的な建物に対して昔の様子をAR動画で再現、組み合わせて体験ができるようにする
といったように使われているのがポイントです。
リアルタイムに風景と動画を合わせる技術が必要なため、通常の動画制作とはまた違ったスキルやノウハウが必要になります。
2.AR動画の活用事例!分野ごとに解説
ここからはAR動画の活用事例を分野に分けてご紹介していきます。
通信業界:NTT西日本
NTT西日本は、顧客へ配布するパンフレットへAR動画を活用しています。
具体的には冊子内の指定の画像をARマーカーとして、対応のアプリをかざすと紙面と連動した映像が再生されるようになっています。映像はICTのソリューションによる課題解決のイメージを紹介しているのがポイントです。
同社ではICTのソリューションイメージを説明するために、動画を活用してきました。しかし動画では見返すという行動が発生しにく営業が効率的にならない点に課題を感じています。
そこでARによって静止資料のパンフレットと、動画資料を融合させることを考えて実行しました。ARにより両社が融合することで、営業説明の効率化や動画のさらなる有効活用などが可能になっています。
EC業界:日本直販
古くからEC業界をけん引している「日本直販」では、新聞や通販カタログと連動する公式ARアプリをリリースしています。
ARアプリからカメラを起動して紙面を読み込むと、商品の詳細動画が表示されるようになっています。わざわざ動画を検索せずに利用イメージなどを動画ですぐ閲覧できるのがポイントです。
ECでは購買に手間が掛かるほど離脱が増えてしまいますが、日本直販では
- 紙面を確認
- ARで説明を見る
- 購入する
といった工程をスムーズに提供することで効率のよい購買体験を提供しています。
ちなみにアプリにはネットショッピング機能が組み込まれており、その場で読み込んだ動画の商品を注文することも可能です。動画視聴の履歴から後で購入をすることも可能なので利便性は高くなっています。
新聞業界:日経
日経(日本経済新聞)では、自社ARアプリと新聞広告を組み合わせた事例をいくつか紹介しています。
たとえば植林の様子を再現するために、AR動画を活用している事例が公開されています。森を上から眺めているような新聞広告を配置、それをARアプリで読み込むことでブルドーザーが出現する仕組みです。ブルドーザーによってどのように植林が行われるのか、CGモデルで音も含めた作業風景がよく分かるようになっています。
ブルドーザーの動きといった側面を静止広告だけで見せるのには限界があります。ARと組み合わせることで、広告からシームレスに動画を再生、動きを含めた雰囲気を伝えることができるのがメリットです。
出版業界:株式会社西東社
「株式会社西東社」では、「mogoo パパッと作る! おいしい今日のレシピ」という自社書籍のPRにAR動画を活用しています。
書籍のレシピ画像をARマーカーとして、料理の工程が動画で閲覧できるようになっています。静止画だけでなく動画もその場で見ながら調理を進められるようになっているのがポイントです。
mogooはもともとレシピ動画サイトであり、「mogoo パパッと作る! おいしい今日のレシピ」はその中からレシピをピックアップしてまとめた本になっています。書籍でも既存のコンテンツを有効活用することで、単なるテキストや画像での調理方法紹介にとどまらない体験を提供できています。
自動車業界:TOKYO AUTO SALON
自動車ショーの1つである「TOKYO AUTO SALON」でも、AR動画が活用されています。
撮影コーナーでカメラをかざすと、実物のタイヤを基点にして自動車がCGで出現します。そしてコーナーの中にある椅子へ座った人が他の人に撮影をしてもらうと、自動車へ疑似的に乗っている体験ができるようになっているのがポイントです。
撮影した写真をFacebook上に掲載できるようになっているのもポイントで、いいね!といったエンゲージの獲得による宣伝効果の増大にも寄与する仕組みです。
自動車といった大型の商材でも、AR動画を使えば手軽に利用体験ができるのはメリットです。
3.AR動画の自社制作は難しい!動画制作業者へ依頼したほうが安心
iPhoneといったiOS端末やAndroidスマートフォンなどでAR動画を見てもらうには、専用のソフトウェアを使いながら編集、指定のプラットフォームへアップロードする必要があります。
しかしクオリティの高いAR動画を制作する場合は、ハードルが高いです。
- AR制作に対応したツールが少ない
- 企画や見せ方などを工夫する必要がある
といった点で、注意点がたくさんあるからです。
またARに対応した機材やソフトウェアを用意するのに、多額のコストが発生するケースもあります。いろいろ考えるのが面倒な場合は、AR動画制作へ対応している業者へ連絡を取ってみましょう。
ただしすべての映像業者がAR動画制作に対応しているわけではありません。
たとえば「ムービー堂」というサービスではドローン撮影といった複数のオプションがあるものの、AR対応とは書かれていません。また「らくムビ」というサービスでも、AR対応というフレーズは見つけられませんでした。
参考:動画制作会社のおすすめ8選!外注時の選び方や注意点も解説
ムービー堂やらくムビといったAR表記がないサービスでも、AR動画を制作してもらえる可能性はありますが実績が心配です。やはり明確にAR対応と銘打った動画制作サービスに依頼したほうがマーケティング面も含めて安心できるでしょう。
料金や撮影内容なども確認してAR動画依頼を検討してみてください。
4.まとめ
今回はAR動画の概要や事例、そして制作の際注意すべきポイントなどを解説してきました。
AR動画にはトラッキング動画やクロマキー動画といった種類があり、それぞれで特性が異なります。このため種類を含めながら企画や見せ方などを工夫してAR動画を制作する必要があるでしょう。
機材やソフトウェアを用意する手間などが気になる方は、外注を検討してみましょう。