顧客ロイヤリティを高めてLTVの向上を狙おう!
突然ですが「パレートの法則」をご存じでしょうか。パレートの法則は「2割が8割を作り出す」という法則で、マーケティング分野においては「2割のリピーターが8割の売上を作り出す」という意味合いになります。
リピーターを上手く獲得しながら売上を獲得するためには、「顧客ロイヤリティ」を後追いできるとよいでしょう。指標を活用しながら顧客ロイヤリティを高める施策を打つことで、効率よく熱心なリピーターを増加させて「LTV(顧客の生涯価値)」の向上を狙えます。
今回は顧客ロイヤリティを理解したい方へ向けて顧客ロイヤリティとは何か、そして計測するための指標や向上させるコツ、事例などをご紹介していきます。
1.顧客ロイヤリティとは?
ロイヤリティは「Loyalty」という「忠誠心」を表す英単語から来ています。マーケティング分野においては「顧客の自社や関連ブランドに対する好感度」を表すのがポイントです。
たとえばお菓子には
・有名メーカーが作っているお菓子
・プライベートブランドで安く製造・販売しているお菓子
の2種類があります。
安く製造している代替品のほうが、有名メーカーのお菓子よりも価格が安い傾向です。にもかかわらず「高いけどこのメーカーだから購入しよう」という顧客はたくさんいます。
これは「このメーカーは信頼性もあって好きだから、継続して商品を購入しよう」という強いロイヤリティが働いているからです。
ロイヤリティが高いほど外部メーカーの商品やサービスにスイッチングするコストが高くなる、つまり代替商品・サービスを購入するデメリットを感じやすくなるので離脱を防げるようになります。結果的にLTVも成長して複数のリピーターが長期間自社の商品やサービスを利用してくれる状態を作り出せます。
またそれだけでなく、ロイヤリティが高い顧客は「この商品やサービスはおすすめだから外部に宣伝しよう」という心理が働きやすくなるのもポイントです。
現在では「SNS」といった外部に情報を自発的に発信できるツールがたくさん用意されており、一度ロイヤリティが高まるとすぐに情報が発信されてよい口コミ(UGC)が広まりやすいので企業にとっては追い風です。
2.顧客ロイヤリティの指標とは?
顧客ロイヤリティを計測するには「NPS」という指標が有効です。NPSは「Net Promoter Score」の略であり、「顧客の中で自社の商品やサービスのよい評判を広めてくれる人がどれだけいるかを計測する指標」になっています。
NPSでは10段階で評価を行うのが一般的です。ランクとしては
・9~10:自社のよい評判を広めてくれる推奨者
・7~8:ロイヤリティが高くもなく低くもない中立者
・6以下:ロイヤリティが低くて悪い評判を広めてしまう批判者
となっており、実際にアンケート調査を行いながらデータを集計していきます。
アンケートには「あなたがこの企業やサービス・ブランドなどを周囲の家族や友人にすすめる可能性はどのくらいありますか?」という質問を設置して、0~10の範囲で評価できるように準備しておきます。
最終的に集まったデータから推奨者と批判者の割合を分析して、推奨者の割合から批判者の割合を引いて数値を確認するのがポイントです。中立者は基本的に計算の対象になりません。
一般的には数値が高ければ高いほど、推奨者の割合が多くて顧客ロイヤリティを上手く育成できている状況です。反対に数値が低くマイナスになってしまう状況は批判者が多いのでよい状況ではありません。
NPSは
・計測方法や算出方法がシンプルで分かりやすい
・NPSと売上に強い相関関係があるので、NPS向上が売上向上に直結する
・算出方法が変わらないので競合と比較しながら計測が可能
といったメリットから使い勝手のよい指標になっており、多くの企業が顧客ロイヤリティ計測のために利用しています。
ただしあくまで定性データ(感情によるデータ)を数値化したものなので、実際の分析にはほかの指標も絡めて正確性を上げていく必要があります。また推奨者と実際に口コミしてくれる人の間に乖離が発生する点にも注意しましょう。
3.顧客ロイヤリティを高める方法
顧客ロイヤリティを高めると具体的に
・アップセルやクロスセルも狙いやすくなり顧客単価が上がる
・継続して購入してくれるのでリピート率が向上する
・信頼性のある口コミが拡散されて新規顧客集客にもつながる
といったメリットがあります。
ここからは顧客ロイヤリティを向上させてメリットを得られるような方法をご紹介していきます。
顧客をロイヤリティでセグメントして施策を分ける
ロイヤリティが違う状態で複数の顧客に同じ施策を行うのは非効率です。たとえばロイヤリティの低い顧客に商品やサービスのプッシュをしてしまうと顧客の気に障り、余計に悪い口コミが広がってしまう原因を作ってしまいます。大企業でも失敗するケースがあるので、中小企業でも注意しておく必要があります。
・ロイヤリティの高い顧客にはアップセルやクロスセルの情報を送る
・ロイヤリティが中くらいの顧客には商品・サービスの活用法などの情報を送る
・ロイヤリティが低い顧客には不満に関するアンケート情報などを送る
といったようにロイヤリティに沿ってセグメントを行い施策を分ければ、ロイヤリティが高い顧客の満足度を維持しながら低い顧客のスコアを向上させやすくなるでしょう。
カスタマーエクスペリエンスを可視化してカスタマーサービスなどの質を向上させる
顧客ロイヤリティを考える上では、「カスタマーエクスペリエンス(顧客が自社の商品やサービス提供に関して受ける一連の体験)」が重要です。カスタマーエクスペリエンスを高めれば推奨者の数は増えていきます。
カスタマーエクスペリエンスをイラスト化してプロセスを可視化できるようにした後、どのプロセスに問題が発生しているかを抜き出して改善に努めていきます。
たとえば「商品・サービス購入後のフォローに問題がある」という場合は、カスタマーサービスとしてサポート人員を増やしたり人員の質を上げたりといった施策が有効です。
また「商品・サービスを購入したが活用法が分からないという顧客が多い」場合は、カスタマーサービスとして活用法について情報発信したり、資料をダウンロードできるようにしたりといった施策でロイヤリティが高まる可能性があります。
カスタマーサービスは受け身の方策なので、事前に商品やサービスの満足度を上げるためにカスタマーサクセスの構築が重要です。
SNSを活用してデータをフィードバックする
SNSはユーザーの口コミ情報が大量に掲載されている有益な情報の山です。顧客とSNS上でコミュニケーションを取りながら評判を確かめることで、顧客ロイヤリティの向上にも大きな効果が見込めます。
よい口コミが多ければUGCとして自社コンテンツへ掲載して、他顧客からの信頼度を高めることも可能です。
4.顧客ロイヤリティの向上事例
ここからは顧客ロイヤリティの向上事例をご紹介していきます。
ソニー損保
オンライン型の自動車保険として有名な「ソニー損保」は登録が簡単な分、解約も簡単です。競合も多く離脱を防ぐための施策が必要でした。
そこでNPSを導入しながらロイヤリティの低い顧客を特定、責任者がヒアリングして不満を聞き取るなどの体制を整備しています。結果的に良い口コミの数も増加して離脱防止に効果が出ています。
参考URL:https://genesiscom.jp/sonysonpo-talk02/
湘南美容クリニック
「湘南美容クリニック」は顧客満足を指標として調査を行いましたが、顧客満足向上が業績の向上に結びつかずに困っていました。そこでNPSを導入して顧客ロイヤリティを確実に把握できるようにしています。
各院のNPSスコアを算出したりして改善点把握・施策実行に活用しています。結果的に各院で施術・医師別のNPSスコアを算出できるようになり、サービスの質向上につなげました。
参考URL:https://www.nttcoms.com/service/nps/case/sbc/
5.まとめ
今回は顧客ロイヤリティとは何か、そして計測するための指標や向上させるコツ、事例などをご紹介してきました。
顧客ロイヤリティの向上により、顧客単価やリピート率の向上、LTVの成長などを実現できます。顧客ロイヤリティを計測するにはNPSを使いながらほかの指標も確認して、適切な施策をロイヤリティごとに打つのがポイントです。
ぜひ顧客ロイヤリティの理解を顧客自体の心情の理解につなげてみてください。