App Storeが驚愕の値上げ!?理由は為替にも関係している

Appleが「App Store」でのアプリ料金値上げを発表しました。原材料高騰といった影響を受けにくい印象があるアプリですが、実際には為替調整といった観点から多くの料金見直しが今までにも行われています。

将来的にはGoogle Playも足並みをそろえて料金を値上げする可能性があります。今回はなぜApp Storeが料金値上げを行ったのか、その概要や要因、今後などをご紹介していきます。

1.App Storeが値上げ?Tierの価格帯が変更に

Appleは自社アプリストアApp Storeにおいて、2022年10月5日から料金を値上げする方針を打ち出しました。対象は日本を含む複数の地域です。日本では2019年10月の消費増税以来の値上げとなっています。

自動更新サブスクリプションについては料金を値上げしませんが、

  • 有料で購入するアプリ
  • アイテム等を購入できるアプリ

などでは、インストール時の料金請求やアイテム課金などにおいて料金を値上げすることにしました。

ちなみにApp Storeを始めとしたアプリストアで販売されるアプリについては、1円単位で料金を決められるわけではありません。あらかじめ提示されている料金テーブル(Tier)において、指定した料金を反映させることでアプリ販売等ができるようになっています。

App Storeでは120円からTierが提示されていますが、これが価格値上げ後は

  • 120円→160円
  • 250円→320円
  • 370円→480円
  • 490円→650円
  • 610円→800円
  • 730円→1,000円

といったように大幅な値上げとなるのがポイントです。全体では平均で3割ほどの値上げとなっており、課金が多いユーザーにとってはかなりの痛手となります。

実際情報を聞きつけたユーザーがアプリ内課金を駆け込みで行うといった事例も発生しており、値上げ発表前後はユーザーの間で混乱が起こりました。

2.App Store 値上げの理由!ドル高騰が要因に

App Storeが今回各地域での料金引き上げに踏み切ったのは、ドル高や円安といった為替の影響が大きいです。

開発者からすると、アプリの価格の基準は開発に掛かった人件費や維持費などになってくるでしょう。そういった費用にアプリ黒字までに掛かる想定期間や1人当たりから取れる平均利益といった要素を考えて料金を決定するはずです。

しかしアプリストア側でのTierでは、料金テーブルを決める要素に為替が大きくかかわってきます。これは1つのTier価格帯を開発者が決定してアプリ課金へ反映させる際に、たとえば「120円=1ドル」といった調整が自動で行われて課金できるようになるからです。

今までは大きくドル、円の乖離が起こっていませんでした。為替は生き物のように1円単位で毎日動くので、Tierでドルや円の取引価格が固定されていると正確に同じ価値で取引が続いているとは言えません。しかしそういった1円単位の細かい調整をTierへリアルタイム反映させるのは至難ですし、今までは為替価格が変更になってもアプリ売上への影響は小さいのが現状でした。

しかしコロナ禍といった影響によって、アメリカのドル価値は上がりドル高になってきました。対して円のほうは経済施策が停滞気味といった要因もあり、需要が上手く伸びず円安となっています。ちなみに為替相場が安くなっているのは今回App Store値上げの対象になっている地域すべてに言えることです。つまり「ドル高が続く中、他の貨幣の価値は下がっており今までのTierだと適切な価格変換ができない状況」と言えます。

仮に従来の「Tier1:120円→1ドル」で課金を行っている海外のアプリがあったとします。この際日本人ユーザーが100人おり全員が課金すると、利益は120円×100人=1万2,000円です。従来は100ドルになりますが、現在では円安でドルに換算した際の価格が下がってしまうので100ドル未満の利益となります。そして結果的に利益が実質的に減ってしまいます。

AppleのApp Store値上げは、こういった問題を解決するために行われたものです。日本円で言うと平均3割ほど値上げすることで、ドルに換算した際に利益が従来通り維持できる計算となります。ただしこれはユーザー数が維持できている状況で言えることです。これが経済の難しいところであり、もし値上げによりユーザー数が維持できなければ結局為替価格が調整されても売上は下がってしまいます。

場合によってはTier2→Tier1といったように価格を下げて対応するところが出てくるかもしれません。公正な為替反映のために今回のTier変更は仕方ない状況ですが、この変更にはリスクがあることも考えるとより値上げについて理解がしやすくなるでしょう。

3.App Store 値上げは今後どうなる!?コロナ禍もカギになりそう

ここからは今後App Store値上げがどうアプリ業界へ影響してくるのか、予測していきます。

Google Playも足並みをそろえる可能性がある

現在Google Playのほうでは価格改定のニュースが入ってきておらず、価格は据え置きとなっています。現状App StoreとGoogle Playで同じ仕様のアプリが課金システムを提供している場合、Google Playのほうだとより安くアイテム等を購入できる計算となります。

ただし今回の件は為替変更に合わせたものであり、影響はApp Storeにとどまりません。Google Playでも価格が変更されなければ、Google Playの海外アプリが日本で獲得する売上が結果的に下がる結果となります。ですから今後、Google Playでも足並みをそろえて同時に価格改定を発表する可能性は十分高いです。

もしGoogle Playでアプリを提供している場合、価格変更のニュースをいち早く受け取れるようにアンテナを立てて情報をチェックしておくと安心です。

コロナ禍終息といった要因によっては今後さらなる価格見直しもあり

今回のドル高や円安には、コロナ禍といった要因がかかわっています。ですから今後もしコロナ禍が収束して経済が復活すれば、ドル高から一変してドル安になり、他の貨幣の価値が上がる可能性も十分あります。

ただし新しい災害や政治的要因で、為替が大きく今後も変動する可能性はゼロではありません。そういった為替変動が頻繁に起こると、開発者側が混乱するようなTierの頻繁な見直しが起きる可能性もあるでしょう。また頻繁な価格見直しはユーザーの混乱を招く元にもなります。開発者としては、価格変更が起きた際にスムーズにユーザーへ情報を伝える工夫が今まで以上に必要かもしれません。

円高になれば価格が再び下がる可能性もある

もし円の価値が復活して円高になれば、ドルを安く購入できるので現状のような値上げを維持する必要性はありません。結果的に価格が再び引き下げられて負担が減る可能性はあります。

実際過去には2011年8月などに、円高の影響でドルに対する価格が引き下げられたこともありました。日本経済が復活するのを待ち望んでいるアプリユーザーは少なくないはずです。

 

4.まとめ

今回はApp Storeの価格値上げについて解説してきました。

Appleのコスト高で値上げした、といった単純な要因で発生していないのが今回の事件の難しいところです。為替の変動は避けられない事態ですから、今後も何度かTierの価格は変動するでしょう。

開発者としては日本国内での課金ユーザーを維持しつつ、今回の変更へ上手く対応することが必要です。