企業の情報漏洩の問題が取りざたされたりとプライバシー関連の問題が増加してから、私たちのインターネットにおけるプライバシーへの高まりは大きくなっています。そしてその動きは、企業の体制にも変化を起こしています。
たとえばGoogleではさまざまなプライバシーへの取組を進めていますが、最近では「マイアドセンター(My Ad Center)」を開設してユーザーが自発的にプライバシー設定ができるようにしているのがポイントです。
今回はGoogleの広告センターとなるマイアドセンターの概要や特徴などを解説していきます。
1.Googleの広告センター「マイアドセンター」とは
マイアドセンターとは、Googleが広告を調整するためのセンターとして開設した新しい機能です。エンドユーザーはGoogleの広告サービスが表示された際、そこからマイアドセンターへアクセスすることができます。
最近はたとえばCookieの取り扱いを行う際、事前に利用してよいかをユーザーへ聞き取る「オプトイン」方式が当たり前になりつつあります。これによってユーザーは確実に自分のCookieを管理できるようになりました。
Googleのマイアドセンターも、こういった動きを反映させているのがポイントです。具体的にはGoogleが配信する広告についてトピックやブランドを事前設定することで、ユーザーが見てもよい広告を取捨選択できるようになっています。
Googleでは昨今のプライバシー関連の問題について「広告等の有益なサービス・コンテンツを体験することと、プライバシー情報の利用状況をユーザーが理解することは本来対立する関係にある」としています。その上で問題を解決するために、次の3つのポイントを公表しました。
- ユーザーへ真の透明性を公表して広告表示方法や理由を理解してもらう
- ユーザー選択を真の選択としてGoogleの広告製品等に反映させること
- ユーザーが広告等の体験をコントロールしてGoogle製品で見たいものを実現していくこと
Googleは上記のポイントを踏まえながら、ユーザー目線でコントロールを行える場所としてマイアドセンターを提供しています。
ちなみにGoogleはこれまでにもYoutubeや位置情報などのプライバシー情報を管理できる「マイアクティビティ」を提供してきました。こういった機能に追加してマイアドセンターが加わることで、より自発的なGoogleコンテンツ管理が可能になっていくでしょう。
2.Googleの広告センター「マイアドセンター」の特徴
マイアドセンターには次のような特徴があります。
管理対象はあらゆるGoogleの広告
マイアドセンターでは
- Google検索広告
- Google Discover広告
- Youtube広告
- その他サードパーティーコンテンツで表示されるGoogle広告
などが管理対象となります。
あらゆるGoogleの配信広告が対象となるので、ユーザーは日常で見る広告の多くをカスタマイズして表示させることができるようになるでしょう。ただし反映には当然、設定を行ったGoogleアカウントでのログインが必要です。
ちなみに広告センターまでアクセスを行わなくても、表示された広告から直接トピック等を調整できるようにしていくということです。
「ハブ」ページから設定を行う
マイアドセンターには、管理トップ画面として「ハブ」ページが存在します。このハブページからさまざまな設定が可能です。
たとえば新車を購入したら、その後すぐにまた自動車を購入するケースは少ないでしょう。そういったときにハブページから「トピック」を選択して自動車関連のトピック表示頻度を少なくするように選択することが可能です。ちなみに各トピックの表示頻度は、そのトピックの広告が表示された際いっしょに表示されたアイコンをクリック・タップして調整することもできます。
また「ある自動車のブランドは好きでない」という方は、そのブランドをマイアドセンターから選択して表示させなくする操作などもできるようになっています。細かいカスタマイズがさらに必要な場合は、「カスタマイズ」タブへアクセスすれば、「最近表示したトピックやブランド」などを確認して調整が可能です。
ちなみにセンシティブなカテゴリーについては、件数といった独自の制限を掛けることが可能になっています。
属性設定等の変更が可能
Googleアカウントを持っている方は、性別や年齢、家族の人数などの属性をGoogleへ予測されて取得されています。今までこういった属性を変更するのは難しかったですが、マイアドセンターによりユーザーが自発的に属性を変更できるようになりました。
たとえばマイアドセンターを確認して持ち家の状況や配偶者の有無といった内容が違う場合、直接正しい項目を入力して反映させることが可能です。これによってGoogle側としては、正しい情報を基にさらなる広告発信ができるというメリットがあります。
ちなみに変更済みの属性には「本人確認済み」のラベルが付くのもポイントです。属性に関しては項目ごとに、広告へ反映させるか否かを選択できるようになっています。
広告主の確認ができる
今までGoogleの広告製品について、ユーザーがどの企業が広告掲載を行っているのかを細かく知るのは難しい状況にありました。広告にブランドロゴなどがはっきり映っている場合もありますが、そうでない場合もあるのではっきり広告主を知ることができないケースもあります。
そこでマイアドセンターでは、はっきりどの企業が広告を出したのか把握できる機能が搭載されています。これによって広告を安心して利用してよいのか、また非表示にすべきか否なのかをすぐユーザーが判断できるようになり便利になりました。
3.Googleの広告センター「マイアドセンター」に関して、広告管理者が注意すべきこと
Googleの新しい広告センターであるマイアドセンターは、ユーザーにとっては大きなメリットをもたらす存在かもしれません。しかし広告管理者側としては、ターゲティングの精度や広告の配信範囲などへ影響が出る点に注意が必要です。
Google側は「特定の広告主やトピック表示回数に関する設定が行われても、広告効果に実質的なマイナスになるとは限らない」としています。しかし同時に「収益面に関する影響は答えられない」としており、これから実証を行う段階なのではとも考えられます。
たとえばCookieの制限に関しては、ターゲティング精度などに問題が出るとして業界からは一部批判がありましたし、各企業は新しいターゲティング方法を模索している段階です。またAppleは厳しいターゲティング制限を課していますが、そういった体制はFacebookなどから批判されて問題になってきました。
今回のマイアドセンターの実装も、少なからず広告の表示数等に影響を与えるでしょう。管理者としてはこれからどういった影響があるのかを実際に運用で分析しつつ、他企業がどのような影響を受けているのか最新情報を調査してフィードバックするのが重要となってきます。
4.まとめ
今回はGoogleの広告センターとして新しく登場した、マイアドセンターについてご紹介してきました。
マイアドセンターの活用によって、ユーザーは好ましいトピック・ブランドの選択や属性変更などが可能となりました。以前よりも細かくプライバシーの扱いを可視化して管理できるようになるので、安心して広告を利用できるようになるでしょう。
ただし広告管理者としては、この機能によって広告表示数やターゲティングなどに影響が出ないかよく注視しておく必要があります。広告業界における全体的な影響もニュース等でチェックしておきましょう。